みなみおおさか




朝日新聞大阪本社
  堺支局、関西空港支局、富田林支局の
記者が赤裸々に語る!
 


支局の窓

                     

 
住民の力で議会は動く
(2010年 12月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
富田林支局長       
阪田 隼人
 皆様、お久しぶりです。前回初めて自己紹介を兼ねて書かせていただいたのが8月号でした。高校野球担当として、甲子園でいつもより熱い夏を過ごしたのが遥か昔のことのようです。寒がりな私は、初めて過ごす南河内の冬に少々不安を抱きつつ、富田林支局から地域のニュース発見に日々励んでいます。

 さて、その中で最近私が関心を持ったテーマは、千早赤阪村の議員報酬の削減です。条例改正により10月から2割削減、月額23万6千円とすることが決まりました。

 議員報酬の問題と言えば、名古屋市の河村たかし市長が「報酬半減」を訴えて、市議会と全面対決しているのを思い出す方も多いのではないでしょうか。大阪市でも橋下徹大阪府知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」の市議団が3割削減を提案しているところです。

 ただ、同じ議員報酬の削減ですが、村の場合と大きく異なる点があります。名古屋も大阪も強力な情報発信力を持った首長が主導しているのに対して、村にはそのような政治家がいる訳ではありません。議会を動かしたのは住民たちでした。

 詳しい経緯は10月28日の夕刊で書かせていただきましたが、河内長野市との合併破談を機に、単独運営を選択した村は増税プランを発表しました。合併協議に参加した議員たちの責任を追及する声が区長さんたちを中心に広まっていき報酬削減を要望しました。議員も村長もその怒りの声を無視できなかったことが背景にあります。

 財政難に陥る自治体が多い中、議員報酬や定数の見直しは各地で相次いでいますが、住民から提案されて実現するケースはまだ少ないと思います。人口6千人余りの小さな村だからこそできたのかもしれませんが、住民自身が政治を変える「住民自治」を体現した大きなニュースだと感じました。住民の力によって議会は動くのです。

 ただ、報酬を減らすことそのものが目的ではないと思います。大切なのは、自分たちの代表である議員が報酬額に見合った仕事をしっかりとしているかをチェックする目です。昼間お仕事をされている方にはその中身を知ることがなかなか難しいのですが、例えば休日、夜間の議会開催を求めてみてはいかがでしょうか。来年4月に選挙がある市町も多く、地元の「先生」が皆さんの声を一番よく聞いてくれるのはひょっとしたら今なのかもしれませんよ。


虐待、なぜ通報しなかった
(2010年 11月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局      
佐藤 達弥
 今年の夏は、高校野球の取材中に何度か熱中症になりかけました。そんな猛暑も去り、休日はお子さんやご家族とお出かけになる方も多いのではないでしょうか。私は大阪地裁堺支部での裁判も担当しています。4月に堺市堺区で起きたある虐待事件について記したいと思います。

 交際していた女性の男の子(当時1歳半)が泣きやまないことに腹を立て、暴行して4月14日に死なせたとして、傷害致死などの罪に問われた無職の男性被告(23)に対する刑事裁判です。亡くなる11日前、顔に青あざを見つけた母親が3カ所の医療機関で受診させていましたが、医師らはこの日、堺市子ども相談所などの専門機関に通報していませんでした。その理由を知りたいと思い、4日間で計15時間の公判に毎日出かけて傍聴しました。

 被告は今年1月から女性と堺区のマンションで同居し、深夜に飲食店で働く女性の代わりに男の子の面倒を見ていました。しかし、育児ストレスや女性との関係悪化などで4月上旬から、手や膝でお腹を押さえつけるなどの暴力をふるうようになりました。

 医療機関を受診したときの青あざは4月2日、被告が男の子の額を拳で殴り、頭突きしてできたものです。法廷で朗読された医師たちの供述調書によると、通報しなかったのは「衣服が汚れておらず、体臭もなかった。育児放棄とは思わなかった」「体形から栄養不足は疑われなかった」「脳内の精密検査でも異常がなかった」といった理由でした。事件直後の現場検証では、室内から吐いた食べ物が付着したタオルが見つかっており、実際は体調を弱らせていたのです。被告には10月1日の判決で懲役8年が言い渡されました。

 今回のように、虐待事件では常に深刻な兆候が現れるとは限りません。長時間泣き続けたり、衣服が汚れていたりと虐待のシグナルは様々ですが、一見大したことがないように見えてもとにかく通報することが大切だと感じます。

 男の子の遺族は法廷で、「私が子どもの立場だったら、『誰もわかってくれなかったじゃないか』と思うのが当然。私に被告を許す権利はない」と語りました。参議院選挙を控えた今年6月にも、保育所の待機児童を政権の課題として取り上げましたが、せっかくこの世に生まれてきてくれた命なのだから、少しでも幸せに育ってくれるよう周りの大人たちが気をつけていかなければいけないと思います。


孤立する人たちに
(2010年 10月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局長   
室矢 英樹 
 読者の皆さんは、「自由都市・堺 平和貢献賞」という賞をご存じでしょうか。堺市が国際平和や人権尊重に貢献した個人・団体を顕彰する賞です。2008年度に創設され、受賞者が7月末に決まりました。詳しい活動歴は8月29日付の朝刊特設面で掲載し、ご覧になった読者もいるかと思います。

 2回目の今年、大賞は在日コリアン向けの高齢者施設を展開する社会福祉法人「こころの家族」理事長の田内基(韓国名・尹基)さんが受賞。奨励賞は、在日フィリピン人の生活相談に乗るNGO「KAFIN(川口フィリピン会)」代表の長瀬アガリンさんと、アフガニスタンで戦争孤児の孤児院を開いたNGO「アフガン孤児支援ラーラ会」が選ばれました。

 受賞者の取材を進める中、何度も考えさせられる出来事が起きました。

 大阪府内で相次いで発覚した幼い子どもへの虐待事件、高齢者の所在不明問題です。いずれも家庭内で起きたものばかりです。社会から孤立し、個人で悩みを抱え込んだ末に、最悪の事態に発展した点で共通しています。

 地域社会がつながりを失った、と言われて久しくなりました。収入減による生活苦から、年老いた親、子どもを支えるのが難しい家庭も少なくありません。しかしながら、国や自治体は十分なセーフティーネット(安全網)の機能を果たしていません。まさしく「自己責任」の時代です。

 今回受賞した皆さんに通じるのは、社会、家庭で孤立する高齢者、在日外国人、孤児らを支え、今と将来に安心を与える活動でした。また、営利を目的とせず、多くの見知らぬ人たちの協力を得て成し遂げている点でも同じです。

 孤立している人は、その表情、住まいの外観からは、どんな状況にあり、そこで何が起きているか見えにくい。困ったとき、頼れる場所があることは、その困窮度にかかわらず、誰にでも必要なことです。「無縁社会」とも表される今、受賞者のような取り組みがさまざまな分野で広がってほしい、と考えた夏でした。



日本の空
(2010年 9月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
関西空港支局長    
千葉 正義
 8月といえば帰省ラッシュです。私も実家の岩手に帰るため、チケットを購入しようとしました。いわて花巻空港までの路線は関空線が廃止され、今は大阪(伊丹)線だけで不便なのですが、それよりも運賃の高さに驚きました。特割などの設定がない路線なので1人片道3万7400円。家族3人で往復すると、20万円近くになってしまいます。以前から正規運賃が高いのは承知していましたが、今回は日本航空(JAL)の経営破綻の影響で、株主優待券が使えなくなったのが響いています。(ちなみに私はJALの株主ではありませんし、会社のルールで株式の購入は原則認められていません)

 話を戻しますと、株主優待券を使えば運賃が半額になるので、いつも梅田の金券ショップに行って数千円で購入し、数万円も安く乗ることができていました。ところが今回はその手が使えないのです。

 一方でここ最近、関空にはいわゆる格安航空会社(LCC)の就航が相次いでいます。アジアの都市への運賃が正規でも片道1〜2万円程度。燃油サーチャージや空港施設利用料などの諸経費を含めれば、それなりの額にはなるのですが、それでも国内線よりは安いのです。パックツアーになれば、実質的な運賃はもっと安いでしょう。国内より海外旅行の方が安いという印象は、だいぶ以前からありましたが、ここまではっきりと意識したことはありませんでした。

 格安航空会社は機内サービスを最小限に絞り、機材や人員をフル活用することで運賃を大幅に下げ、飛行機をバスのような感覚で乗ってもらうことを目指しているそうです。個人観光ビザの発給要件が緩和され、最近見かけることが多くなった中国人観光客の来日手段としても注目されています。JALをはじめとした国内航空会社が苦戦する中、関空もそんな元気なアジアの格安航空会社に活路を求めています。

 そんな状況を見るにつけ、このままでは国内の交通産業が元気なアジアにのみ込まれてしまうのではないかと心配になります。国交省も現在、取り組んでいるようですが、国際競争に勝てるような新しいビジネスモデルが求められていることを改めて実感しました。

 ちなみに今回は、東京まで飛行機で行き、新幹線を乗り継いで帰省することにしました。これで数万円の節約になります。



球児からもらう勇気
(2010年 8月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
富田林支局長       
阪田 隼人

 読者の皆様、初めまして。4月から富田林支局に赴任しました。出身は堺市。2005年の入社以来、静岡県で記者修行を積んできましたが、久々に地元に戻って参りました。ただ、6月から大阪本社の高校野球班に配属となり、甲子園大会が終わるまで支局をたびたび留守にさせてもらっています。ご迷惑をおかけしますが、何とぞよろしくお願い致します。

 さて、私が日々取材している高校球児たちの話を少しさせてください。夏の選手権大会は朝日新聞が主催していて、他紙を圧倒する多くの記事を掲載しています。サッカー部だった私からすると、「野球だけずるいぞ」などとうらやましくもなりますが、取材になるとたびたび感情移入してしまうのが高校野球です。

 7月10日に開幕試合を戦った市岡商は、男子生徒が少なく春になるまで部員が9人に届きませんでした。主将が勧誘を重ねようやく11人に。新しく入ったメンバーの中には、中学でけがをして野球への情熱が一度冷めてしまった投手もいました。そんな彼に練習で声をかけて盛り上げ、誕生日には野球用具をプレゼントする主将。二人の絆が徐々に深まっていった話を聞きました。

 試合は二人が大活躍して先制点。ただ、次第に実力の差が出て最後は負けてしまいました。試合後、泣き崩れる主将にずっと寄り添う投手。ようやく主将が顔をあげると、今度は投手の目からも涙がこぼれ落ちました。主将が泣いているうちは必死に支えようと、我慢していたというのです。ちなみに、私は試合序盤から計5回くらい涙があふれて、取材中の記者としては失格。恥ずかしい限りでした。

 彼らの努力や必死なプレーにはいつも勇気と元気をもらいます。気持ちが落ち込んでいる時でも、選手たちに出会うたびに「おれもこんなところでくよくよしてられへん」と奮い立たせてくれます。読者の皆様にもぜひ同じ感動を味わっていただき、その日一日がいい気持ちで過ごせるような新聞を作っていきたいと思っております。


事件取材って何だろう?
(2010年 7月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局      
佐藤 達弥

 読者の皆さま、初めまして。4月から堺支局に着任した佐藤達弥と申します。出身は石川県七尾市で、2004年の入社以来、広島、松山、京都の各総局と大阪本社整理部で勤務しました。主に取材してきた分野は、事件と裁判です。ある火事についてお話ししたいと思います。

 5月17日未明、岸和田市の住宅密集地で火災が発生し、長屋3棟15世帯が全焼しました。現場へ向かった私は、被災者の方々が一時避難していた集会所を取材することになりました。

 木造の空き家を改装した集会所には、十数人のお年寄りや家族がじっと座っていました。肌寒い朝、靴を脱いで畳の間に入ると、皆一斉にじろりと私を見ました。

「こんな時に申し訳ありませんが、当時の状況について聞かせてくださいませんか」。尋ねて回りました。それを聞いていた男性の一人が「あんた、今毛布持ってきてくれるんか。こんな時に話したいなんて気になる人がおると思うか」。その場にいた人たちは着の身着のまま避難していました。私は、男性に対して返す言葉がありませんでした。

記事を書くことって何だろう。自問自答することは日常茶飯事です。被害者やその関係者を取材しようとして、「もう来ないでください」「人の心に踏み込むのですか」。何度聞いたか数え切れません。過去の一言一言を思い返すと、たくさんの人の心を傷つけたかもしれません。

では、当事者の取材は必要ないのでしょうか。私は、いいえと答えます。

遠い国の話になりますが、イラクやアフガニスタンで自爆攻撃が相次ぎ、連日多数の人が亡くなっています。ところが、国内の紙面上の扱いは大きくありません。どんな人だったのか、仕事を持っていたのか、夢を持って勉強している学生だったのか、記事が死者の人となりに触れることは少なく、亡くなった人々は記憶から消えていきます。

当事者の思いに気を配り、読者の皆さんに何かを感じていただけるような記事を書きたいと思います。皆さんともお会いする機会があるかもしれませんが、そのときはどうぞよろしくお願いします。




自由都市・堺で
(2010年 6月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局長 
室矢 英樹

 4月1日付で社会グループ・堺支局長を拝命した室矢英樹と申します。

 南大阪は、今回が初めての勤務となります。府内は6年前、北摂の高槻支局で働いていたことがありますが、久々の支局勤務に緊張する日々です。簡単にプロフィルをご紹介します。

 1994年に記者生活をスタートさせ、今年で17年目を迎えました。神戸、鳥取、大阪、福岡などを回り、前任は大阪本社生活文化グループで主に住宅問題を取材していました。それ以前は長く社会グループに所属し、警察、裁判、教育などを担当していました。甲子園取材も2回経験し、横浜の松坂投手でわいた第80回全国高校野球選手権記念大会が強く印象に残っています。

 さて堺では、堺市政を担当することになりましたが、着任早々、大きなニュースが飛び込みました。

 橋下徹・大阪府知事が打ち上げた「大阪都」構想です。これは大阪府と大阪、堺両市などを再編し、大阪市を現在の24区から8区、堺市を7区から3区の特別区にするものです。新たな「都」はインフラ整備など広域行政を手がけ、「特別区」は区長の公選制や無償のボランティア区議を導入するのが主な内容です。

 この動きは堺市政にも波及しました。自民系会派の堺市議5人が賛同し、新会派を届けました。ただ、新会派は堺市を三つに区割り議論よりも、伊丹空港を廃止し、関西空港の活性化を推し進める橋下知事の考えを重視したようです。

 竹山修身・堺市長の対応に注目が集まりました。ご存じの通り、竹山市長は橋下知事の強い支援を受け、昨年9月の市長選で初当選を果たしました。実は、新党旗揚げの前、市長は知事と大阪市内で会い、「基本的な方向性は同じ」との考えを示しました。しかし、新党が発足するや、市長は区割りについて「広範な議論が必要」だとして明言を避けました。

 一連の動きについて、読者のみなさんはどう受け止めたのでしょうか。堺市は2006年に政令指定都市に移行したばかりで、疑問を覚えた方もいるかもしれません。率直に言えば、この動きは堺市民の意見を幅広く反映したものとは思えません。

 堺は、中世の時代に「東洋のベネチア」と呼ばれたように自由都市の歴史があります。住民自治が生かされる議論を大いに期待しています。同時に、こうした視点を持ってウオッチしていきたいと思っています。

 堺支局では、私とともに佐藤達弥記者も着任しました。空手2段の腕前で、ガッツあふれる記者です。ご支援ください。どうぞよろしくお願いします。



狭山池博物館
(2010年 5月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
  富田林支局長
白木 琢歩


 2年間お世話になった富田林支局を3月末で離れ、大阪本社に異動しました。これまでご愛読いただいた皆様に感謝申し上げると同時に、後任の新支局長・阪田隼人記者もどうぞよろしくお願いいたします。最後に当欄でお伝えするのは、大阪狭山市にある府立狭山池博物館のことです。

 博物館は、7世紀前半につくられた日本最古のため池とされる狭山池の歴史を紹介するため、2001年に建てられました。設計したのは世界的に有名な建築家・安藤忠雄さん。打ちっ放しのコンクリートを多用したモダンなデザインや迷路のような構造が特徴で、実は世界各国の安藤建築ファンが訪れる場所なのです。しかも入場料はタダ。

 そんなユニークな博物館ですが、年間約1億7千万円(07年度決算)の赤字が出るなど経営は苦しい状態でした。府の財政再建をすすめるべく登場した橋下徹知事が、大幅な支出削減策の検討を指示。結局、昨年4月から館の運営に地元の大阪狭山市と市民グループ有志が加わることになりました。

 博物館は新たな目標として、入館者10万人という目標を設定しました。過去最高の記録より1万人以上多い数字です。市幹部は「キリのいい数字なので10万としたが、目標達成できる自信はなかった」といいます。そこで活躍したのが運営に加わった市民たちでした。まず新たなイベントとして、これまでやったことがなかった昆虫展や日展作家の絵画展を企画。それぞれ開催した月は開館以来最高の入館者がありました。屋上に花壇を造成し誰もが気軽に憩えるスペースをつくったことで、隣接する池を散歩している人たちがふらりと立ち寄る機会も増えました。

 その結果、2009年度最終日の3月31日に10万人を突破したのです。ややもすればかけ声だけに終わりがちな「市民と行政の協働」が機能した結果といえるでしょう。入場者が増えたからといって直接収入が増えるわけではありませんが、経費削減の積み重ねで赤字額は約1億円ぐらいまで圧縮できそう。職員からは「今年はさらに上の目標を、というハードルが上がって大変だ」とうれしい悲鳴が聞こえます。

 市は将来的に、狭山池を韓国最古の貯水池と共同で世界遺産登録しようとしています。ライバルは多く道のりは平坦ではないでしょう。ですが今回の目標達成は、多くの人の知恵を結集すれば思いがけない成果が生まれるということを示した思います。


異動のご挨拶
(2010年 4月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局長 石前 浩之
岡本 玄 

 堺支局は支局長・石前(写真左)と岡本(同右)どちらも、4月1日付で異動になります。
     ◆

 神戸総局に赴任します。2年間、本当にたくさんの方々にお世話になりました。この場を借りて心より感謝申し上げます。

 堺を離れる今、思い浮かぶのは昨年来の選挙戦の数々です。関わった選挙は、和泉市長選、総選挙(大阪16、18区)、堺市長選、岬町長選、岸和田市長選、貝塚市長選。いずれも、稀にみる激戦でした。

 とりわけ、橋下徹知事が推す竹山修身氏が、与野党相乗りの現職を破った堺市長選は、全国的なニュースになりました。

 残暑の中、各候補の街頭演説に何度も足を運びました。「堺市の皆さん。堺市民は馬鹿にされてるんですよ」。相乗り批判に始まり、市政転換の必要性を応援演説で訴えた橋下知事の言葉を、息を詰めて聴き入っていた有権者の皆さんの表情が印象的でした。

 あれから半年。当時の熱気、高揚感が今も続いているな、と感じている有権者はどのくらいいるのでしょうか。「竹山市長は、少なくとも破壊者ではなかった」と話す市幹部もいます。

 ただ、まだ半年です。市民の皆さんが示した「チェンジ」の意思を、竹山市政がどう具体化してゆくのか、神戸から見届けます。(石前浩之)

     ◆

 2月21日付の朝刊で伝えた週刊まちぶら番外編「千利休ゆかりの堺かいわい」で、茶道具セットのプレゼント応募を呼びかけました。届いた応募はがきは約2千通。段ボール1箱分にもなりました。多くの方に応募いただき、ありがとうございました。

 10年間の記者生活の中で、これだけ反響があったのは初めてでした。当選者4人は無作為で選びましたが、はがきに書かれた感想や要望はすべて目を通しました。読者の方々の生の声を聞くことができる貴重な体験になりました。

 「お茶というと京都のイメージがありましたが、原点は堺なのですね」。堺に根付いた茶の湯の文化、中でも和菓子に興味がある、という方が目立ちました。阪神大震災で茶道具を失った5人からも応募がありました。震災後、家具など生活必需品の購入を最優先にしていたため、茶道具は後回しになっていたそうです。家族や友人らの死に直面し、一杯の茶に「癒やし」を求める方々も多くいました。

 堺支局に着任して2年。この3月末で、大阪本社に異動になりました。「その道に入らむと思ふ心こそ我が身ながらの師匠なりけれ」。利休の教えをかみしめ、新天地でも心機一転、頑張ります。引き続き、ご指導をよろしくお願いいたします。(岡本玄)



2400万円は高い?安い?
(2010年 3月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
関西空港支局長
千葉 正義

 関西空港を運営する関西国際空港株式会社が1月末、社長ら取締役1人ひとりの報酬額を公表しました。それによると、社長は年間約2400万円、会長は約2350万円などです(詳細は同社のホームページに出ています)。私はこれが高いのか安いのか正直分かりません。ただ、橋下・大阪府知事より高いのは確かなようです。

 手前みそですが、関空会社がこれを公表したきっかけは、私が書いた記事です。多分そうです(笑)。

 昨年末に朝日新聞夕刊に掲載した「岐路 3空港の行方」という記事で、関空会社は一般の民間企業と同じレベルでしか報酬を開示していないことや、役員が出張にファーストクラスを使っていることなどを指摘しました。その翌日、橋下知事が「役員報酬を個別に開示しなければ、府から税金は出さない」と語り、今回の関空会社の対応につながったわけです。ちなみにファーストクラスの使用も今後はやめるそうです。

 実は役員報酬については、昨年秋、記者会見などで個別にいくらもらっているか教えてほしいと私は何度も質問しました。国の外郭団体などは個別開示が普通なのに、関空会社は「うちは民間会社」と応じませんでした。関空会社は確かに株式会社ですが、極めて公共性の高い会社で、国や府から多額の税金が投じられています。実質的には公的機関なわけで、法的義務がなくても積極的に開示すべきだと私は思いました。橋下知事も同じ考えだったと思います。

 もし仮に昨秋の記者会見で、関空会社がいとも簡単に報酬額を教えてくれていたら、どうだったでしょう。社長は2400万円。私はうーんと考えあぐね、結局そのこと自体を記事にすることもなかったと思います。ファーストクラスの件も、公式には教えてくれなかったので、あえて明らかにすべきだと考えた面もあります。隠そうとしたため、結果的にかえって多くの人に知られることになったわけです。

 関空会社はもっと世間の感覚に敏感になり、みんなからより愛される会社になってほしいと思います。関空に頑張ってほしいと思うからこそ、人一倍そう願うのです。


大阪唯一の村
(2010年 2月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
 富田林支局長
白木 琢歩

 今回は富田林支局の管内にある大阪府唯一の村・千早赤阪村について書いてみたいと思います。昨年夏に河内長野市との合併を断念し、今後の行く末が注目されるからです。

 千早赤阪村は大阪府南東部の奈良との府県境に位置します。人口は約6300人。村の面積の8割が山林で、かつては林業で栄えました。鎌倉時代末期に活躍した武将・楠木正成が生まれ育ち、少数の手勢を率いて幕府の大軍を足止めにした籠城戦の舞台でもあります。

 林業の衰退や住民の高齢化で税収が少なくなり、さらに小泉元首相が始めた「三位一体の改革」で国から地方へ配るお金(地方交付税)が激減。村長は住民サービスの維持が難しいと判断し、2007年に隣接する河内長野市へ編入合併を申し込んだのです。

 村議会は合併協議推進の決議を可決し、08年の村長選では合併推進を掲げた現職が反対派に大差で勝利。合併への機運が高まったかに見えました。しかし思うように協議が進まず、昨年8月に村長が合併断念を表明したのです。

 合併断念の直接の引き金は、一部の村議会議員が、村長の強引ともとれる政治姿勢に反発したからでした。合併すれば身分を失う議員の「保身」ゆえだ、との指摘もあります。反発の根底には、村が消えることへの心情的な抵抗感もあったと思います。

 村民の気持ちは複雑です。「議員は何をやっているんだ」と怒る人がいます。一方で「村が残って良かった」と安堵する声も少なからず聞かれます。はっきりしているのは、お金がない中で、今まで以上に経費を切り詰めて村政運営を続けなくてはいけないということです。増税も現実味を帯びてきました。

 一連の経過から学ぶべきことは何でしょうか。2年近く取材してきて思うのは、住民が政治にさほど関心を示さず、役場や議会に村のかじ取りを「丸投げ」しすぎていたのではないかということです。

 4年に1度の選挙だけではなく、日ごろから首長や議員の仕事ぶりをチェックし、おかしいことにはどんどん声を上げていく作業が必要です。他の自治体でも同様ですが、「お任せ民主主義」から抜け出すことが、自治体再生のカギを握ると思います。村民はそれを学ぶため、今回かなり高い授業料を払ったと言えるのではないでしょうか。


食生活を充実させたい
(2010年 1月号)
朝日新聞大阪本社 社会部
堺支局長  
 石前 浩之


 以前も書いたのでこの欄を熱心に読んで下さっている方はもしかしたらご記憶があるかもしれませんが、私は妻子を府北部に置いて単身赴任をしております。

 大きな悩みの一つは、食事です。もともと料理は割と好きなので、昨年4月の赴任当初は、「堺HAMONOミュージアム」で包丁を新調して、野菜炒めだの手羽先のスープだのちょこちょこ張り切って作ってました。しかし、1人だと食材がどうしても余ります。加えて、仕事が不規則で毎日台所に立つわけにいかず、もったいないことに食材を次々にダメにしてしまいました。特に野菜がいけません。今では、自分で作るのはほぼあきらめてます。

 だからといって外食ばかりでは栄養が偏ります。出前もさすがに飽きました。出来合いの総菜も、2品、3品買うと結構な値段になってしまいます。毎日のことなので。

 役所用語的には「夫婦と子ども2人のモデル世帯」などと言われてきましたが、近年最も多い世帯の形は一人暮らし。同じような悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
 で、こんな店が増えたらいいな、という所をご紹介します。

 堺市堺区の浅香山病院が、精神障害者の就労訓練の場として昨年4月にオープンさせた「てくてく商會」という100円均一ショップです。普通の100均ショップは生活雑貨が中心ですが、ここはお総菜も売っているのです。

 主に退院して一人暮らしを始めた方向けに売り始めたとのことですが、幅広く近隣の一人暮らしの人たちに人気だそうです。一品100円だから、二つ三つ買っても懐へのダメージは少なめ。レストランでの勤務経験があるスタッフらが店内の厨房で手作りしたものなので味もよし。メニューも日々変化をつけてます。ご飯も100円。
 この100均総菜、はやらないでしょうかね。

 勝手な希望ですが、居酒屋がやってみてはどうかと思うのです。カウンターの上に、家庭的な料理を乗せた大皿がずらっと並んでる店がありますよね。あれをちょっとずつ安く売ってもらえたら嬉しい。私の行きつけの店でも、ほうれん草のおひたし、肉じゃが、ブロッコリーのクリーム煮、カボチャの煮付けなど美味しそうな料理の数々が山と積まれています。

忙しい中そんな面倒くさい商売は難しいだろうし、そもそもお店にしてみれば店内で飲み食いしてもらいたいだろうし、と店のママさんには言い出せていません。一杯飲んで、翌朝のための一品、二品を買って帰るだけでもいいんですが。

 単身赴任の皆さん。一人暮らしの皆さん。食生活、充実してますか?